疑惑事件多発に想う

 中国で多発する食品安全疑惑、日本の事故米、その他建設談合や教員採用疑惑、等々日々メディアを賑わさない日はない。

 世界中でこのようなことは起こっているのだろうが、日本は徳を重んじ、勤勉に働くことを信条として
我々の生活の習慣として、教えられなくても、自然と育まれているものだと感じているところもあった。

 それは、一神教のような、特にコーランのような経典があるわけでもなく、それゆえ「啓典の民」と言われるような宗教心が、表面的に強く表れているわけでもない。

 しかし、日本人は、本地垂迹説と言われるように、山や森林、自然、神、仏など何に対しても畏敬の念を持って八百万の神に精神的に一として、接している方々が非常に多いと言われている。

 しかし、最近の上記のような事件の多発は、このような考えの希薄さがそうさせているのではないだろうか。
 西洋近代化を手本とし、GDPという指標では520兆円というアメリカに次ぐ、世界第二位の経済大国である。
 その進歩史観、進化論、物質主義、拝金主義の行きすぎが、歪となって表れてきている結果とみることができる。
 
 もちろん、生活を豊かにするのには、お金は必要だ。企業も利益を出して、持続的繁栄をさせて行かねばならない。
 その結果、税金として国家に納められ、それが循環するという好結果になっていく。

 しかし、どこかで歯止めが必要だと感じている。それが正しく今なのではないだろうか。
 地球環境問題もその表れだ。
 
 この解決策も非常にビジネスライクで、欧州を中心としてそのビジネスのヘッドを取ろうと必死になっている姿は興ざめのところがある。

 さりとて、日本はそんなことに振り回されることなく、排他的で、孤立してこのグローバリゼーション
 時代を乗り切れるか。
 そんなことはあり得ない。鎖国政策など無理な話である。

  やはり、地球が、日本が継続的に100年先、1000年先、1万年先まで繁栄していくためには、
 誠実さがいるのであろう。
  そのスタンスを日本は守っていくことが大事なのだと思う。
 「だますよりだまされろ」というくらいの覚悟がいるのかもしれない。

 そんな時、松下幸之助翁が松下電器産業の社長時代に出した「社主通達」がとても心に留まった。
 昭和17年10月30日のことだ。

 おりしもこの頃の時代背景は、東条英機総理大臣のもと、前年には真珠湾攻撃により、太平洋戦争に突入し、戦争一色のその文脈にである。
 そんな中でも、このような日々努力する姿勢には、誠に驚かされる。

 社主通達
   
    製品劣化に関する注意

 時局下各種の統制強化にともなひ、資材、素材の関係に困難なる点あり、代用品の使用、仕様の変更等を必要とすることあらんも、之が為に製品自体を劣化せしむるが如き事ありては一大事に有之候間、如何に代用品を使用する共、仕様に変更を加ふるとも其の製品はより良き成果を得らるる様、特に左記各項に留意せられ松下電器製品は如何なる見地よりするも棋界に於いて其の優秀性を保持する様考察相成度候。
  
  記

1. 製品には、親切味、情味、奥床しさ、ゆとりの多分に含まれたるものを製出し、需要者に喜ばれることを根本的の信念とすること。
2. 経営の本諦を誤り利潤にとらはれ資材の用法、製品の仕様、工作の方法等に無理を生ずるが如き事にて、製品を劣化せしむること往々あり特に此の点に留意のこと。
3. 常に業界の動き及び市場に関心を持ち、同業者の商品と当社の商品との比較研究調査をなし、如何なる微細部分たりとも遜色なきものの製出を期すること。
4. 各種の統制強化され資材其他に相当困難はあらんも、之にこだはり資材の節約を敢てし、自然と製品の劣化を来すが如きことのなき様注意すること。
5. ナショナルのマークは其の製品が押しも押されもせぬ誇りを標示するものなることを念頭に置き寸分の隙なき製品を以ってすること。
6. 製品の物的要素たる資材、工具は時局下統制時代何れの業界も同等の見方あらんも心的要素たる作業員の動作は、その指導訓練に依つて格段の差を生ずべく特にこの点に関心わ持つこと。
7. 以上の諸点より顧みて微細なりとも心当りあらば如何なる犠牲を払ひても立所に是正改善の策を樹つること。

 
 このような通達であった。
 現代でも十分に通用するものであり、
 現代だから余計この70年近く前に出された、その心情を汲み取り、今に生かしていかねばならいと
 感じている。
 それ故、ここに一企業に通達であるが、列記させて頂いた。

 とても感じるところ大である。
 
  さすがに経営の神様と言われる所以である。