1970年に世に出た本なので、もう40年近く前の認識のものである。
しかし、全く古さを感じない。
それは、ここに書かれている実証実験は古いものもあろうが、考え方自身は未来永劫
必要なことだと思うのである。
いや、今の時代だから余計読む必要があると思われる。
つまり我々のこの世界観の認識の仕方を考える必要があるということだ。
著者は環世界という表現をしている。
読むとしっくりくる。
最後の言葉を引用しておく。
自然研究者のさまざまな環世界で自然が客体として果たしている役割は、
きわめて矛盾に満ちている。それらの客観的な特性をまとめてみようとしたら、
産まれるのは混沌ばかりだろう。
とはいえこの多様な環世界はすべて、あらゆる環世界に対して永遠に閉ざされた
ままのある一つのものによって育まれ支えられている。そのあるものによって
生み出されたその世界全ての背後に、永遠に認識されないままに隠されているのは、
自然という主体なのである。(訳者 日高敏隆、羽田節子)
ギリシャ哲学から始まり、デカルト、ベーコンの自然機械論、自然支配という一神教の
考え方に対して、鋭いアンチ・テーゼである。
そのような批判めいたことは直接には語っていないが、云わんとするところはそうである。
それに比べて私たちは、多神教の自然崇拝である。
言い換えれば、アニミズムの世界観である。
また、有情と無情という対比でも語ることができる。
我々日本人観は、有情というのは、全ての生きとし生けるもの、いやそれを超えた自然そのもの
だという認識が深層にある。
自然には神が宿り、我々人間を含めて全てのものが輪廻転生するという感覚である。
そのことを強く認識させてくれる本なのだ。
本当に薄い本なので、じっくり読んでも2時間程度で読めます。内容も分かりやすいものです。
ユクスキュルという非常に珍しい名前の方だ。
どこの出身で、どの民族なのだろうか?
何も分からないまま読んだ本だが、調べたくなっている。