『一神教の闇---アニミズムの復権』

イメージ 1

  以前から劣位のパラダイムについて述べてきているが、一般的な西欧社会の常識として、アニミズム

 的思考は、一神教の超越的秩序の宗教より、劣っているというのが一般的のようだ。

  これに対して、この書籍は真っ向、異議を述べ、そのパラダイムが全く間違った思考であると

 主張する。

 その第一は、一神教は人間への愛であって(これも誠に怪しいとは思うが…)、アニミズム多神教

 の世界の文化圏の人々の思考は、それに対して言うまでもないが、自然信仰にある。

  つまり、今長期的な問題でもあり、喫緊の課題でもある「地球環境問題」は、人間中心(優位)の

 考えではなく、自然や他の生物との共生というパラダイムに変えなければ地球は死滅するという考え

 にたった書籍である。

  そのキーになるコンセプトが「循環」だからである。その循環の考えと一致した思想がアニミズム

 にあると筆者は述べている。

  また、この中で私は特に、印象に残ったことがある。

 筆者は、大橋力『音と文明』岩波書店(2003)を良く引用していて、人間にとってもっとも好ましい

 音環境とは熱帯雨林であるという。そこでは、人間の聴覚ではとらえきれない20kヘルツ以上で130k

ヘルツにも達する癒しの音、憩いの音に満ちあわれているという。そのような環境で生活すると

 脳幹を刺激し、ストレスの解消や免疫率の向上などの効果が実験的に確かめられているという。

  それに対して、砂漠は静寂で、その音環境は20kヘルツ以下の音に限られるそうだ。

    
      ちょっと話はこの本からそれるが、ハイエンドのアナログのレコード再生とCD
     との差とも置き換えることができる。最高級のアナログプレーヤーを使い、それ
     に見合った装置で再生すると、なんとも心地よい音と音の「間」が聴き取れる。
     静けさがCDとは違うのである。ただこの「あいだ」という静寂について、ジャングルで
     言うと、木々の一本一本の空間が分かる、つまり、がさっと木が群生しているという
     のではなく、一本一本に個性があってそれが空間の中で見通せるような、視覚的
     な聴覚空間のことである。

 
 この20Kヘルツ以下の音空間は都市の空間と同様らしい。「東京砂漠」という歌があるがまさに

 音としては同様らいしい。そのようなストレスの世界から夢想したのが、超越的秩序の一神教

 なのだ。それに比べて、アニミズムはストレスレスな環境から生まれた現世的秩序なのだ。

 中身のことは、読んで頂きたいと思うので割愛するが、

 そのような一神教の「力と闘争の文明」が大航海時代以降牛耳ってきたが、これからはアニミズム

 「美と慈悲の文明」が、地球のためには必要なことだと力説している書籍です。

 新書で読みやすいが、ここには驚くほどのこのアニミズムに関する他の書籍を引用しているので、

 興味のある方は、この本を通じて広く、深く研究できると思う。

  私はこの領域に興味を持ちだしているが、ここに多数、引用されているが、まだ4冊しか読んでい

 ないことがわかった。

  とにかく早速、前掲の『音と文明』を読みたいと思う。600ページの大著らしいので大変そう。