『地中海』

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  フランスの歴史家フェルナン・ブローデルが著した文字通り歴史的な大著の

『地中海』である。

 原題は『フェリーぺ二世時代の地中海と地中海の世界』だ。

 16世紀後半の歴史書なのだが、方破りである。まず博士論文であるのに、そのような窮屈さ

 がないというところが驚きである。

 この時代、日本では戦国武将の織田信長(1534年生まれ)、豊臣秀吉徳川家康らが同年代、

 イギリスのエリザベス一世も同様(1533年生まれ)だ。

 スペインのフェリーぺ二世は1527年生まれだ。

 この16世紀はなぜこのような世界的に歴史的な武将が生まれたのであろうか。

 フェリーぺとエリザベスはスペインとイギリスという関係上、アルマダという無敵艦隊が敗れて

 世界がイギリスの力の基に動き出そうとして、その動きはお互いによく分かっていたが、

 その当時、大航海時代を迎えたとはいえ、今のように情報が発達していない時代に

 日本でも織田信長のように戦争のあり方のパラダイム転換をしているのである。

  やはり伝播するものなのだろうか。

 都市国家という小さな空間からより大きな概念の国家像が模索されつつあった時代という世界的な

 潮流があったのかもしれない。

  これから読み始めるわけだが、昨日からめくり始めたのだが、「地中海」という歴史の書物

 なのに、まずその地中海を取り巻く「山、山脈」という地理的なアプローチから入っている。

 もちろん、ドメインを決めるためにどのような歴史書にもそのような書き始めはするものだが、

 これはもう、そのような中途半端なものではなく、地理学者ではないかと思うくらいの

 力の入れようだ。それだけで大論文になってしまう。

  これがブローデル流の構造から捉えるという考えだ。

 空間、時間的に歴史を見るということだ。

 そういうことなので、一人の例えば、フェリーぺ二世についてスポットを当てているのでは

 ないのである。

  今までにないといってもとっても古い書物なのだが、新しいアプローチからの歴史書である

 ことは間違いない。

  それは、フランスに生まれ、アルジェリアで教え、その後ブラジルという南半球で教鞭

 をとったことが大きかったのだとおもう。

  今風にいうとグローバル視点ということだろうか。

  とにかく、今でも史実や発見、発明の結果を重視する風潮にある。

  それはそれで当然のことだろう。しかし、これからの我々により重要なことは

 その結果より、それがなぜ起こったのか、であるとか、その結果後どうなったという

 時間的なプロセスを観察することのほうがより重要と考える。

 それを知ったり、考えたりすることによって、新たな知が生まれるのだと思う。

 読むのが楽しみだ。

  とにかく大著5分冊なので大変だが、それ程難解な本ではなさそう。

 半年を目途に読破したい。