フランシス・フクヤマ著『歴史の終わり』

イメージ 1

 歴史家や著名人が歴史を語る時によく引用される著名な本である。
 名前と文脈的な観点からは、少しは理解していたが、まだ読んでいなかった。
 大著である。

 これだけの、主張ができるって、すごないなぁと関心しながら読んだ。
 批判もあるだろう。
 でも、このような主張をベルリンの壁が崩壊する前の1989年の夏に論文として発表され、世に出された
 意義は大きいと感じている。

 元々の題は『The end of history and the last man』である。

 日本語に訳すると「歴史の終わりと最後の人間」になるのだろう。
 でもその中の「最後の人間」が日本の出版の主題から消えている。

 私はこれを読んで、その最後の人間が削られたことに、とても残念に思った。
 この本の凄さは、その「歴史の終わり」という主張と共にもう一つ「最後の人間」を
 強く訴えているところである。

 ニーチェの言葉あるが、それを引用して、民主主義、自由主義と人間とを向かい合わせて
 対峙させているところがこの本の私にとって一番のよみどころであった。

 歴史の終わりという主張どおりには、世の中は動いているとは思えない。
 ウィンストン・チャーチル元イギリス首相は
 「民主主義は最悪の政治であるが、今まで存在したいかなる政治制度よりましである。」
 という、有名な言葉がある。

 この民主主義を、枝葉的には脅かすものはあっても、本質的に脅かすものはない、ということを
 言っている。
 歴史をどのくらいのスパンでみるかによって、この本の価値は変わるであろう。
 100年後の人々にも読んでもらいたい内容である。
 
 というのは、我々が読むと、短期思考になり、民主主義を脅かすテロがあり、民主主義がとても
 揺らいでいるではないか、自由主義も「サブプライム」で世界の金融機関を震いあがらせ、
 我々の経済、生活にまで、かなりの悪影響を及ぼしつつある状況である。

  このような大きなことであるが、眼先のことの事象と対比してしまい、この本の主張が
 間違っているという、結論になってしまいがちだ。

  潮流をよみ、この断片(今世界で起こっている重大な問題)がどのような歴史上の位置づけになるのか
 を考え、この本と照らしながら読む価値は、十分にあると感じている。

  是非読んでみて下さい。
 でも絶版のようですが…。

  私も文庫本の古本を手に入れて読みました。