バンデンハルのBB-SPXのカートリッジの聴きこみ(続き)

 休みの日にかなり長い時間聴きました。非常に柔らかい音です。
このカートリッジはあまり評価が高くないようなコメントもちらほら見かけます。それも頷けます。
とても柔らかくて、このダイヤトーンのモニタースピーカーが何でもあからさまに出してしまうのと真逆な感じです。とても控えめなため、高域が出ていないのでは、と感じるくらいです。
嫌な音は一切出しません、と宣言しているような針です。
 
 しかし、その柔らかくあまり自己主張しないようで、見事な世界観を創りだしてくれていることに気が付きます。全体は柔らかですが、一つ一つの楽音はとても鋭敏なのです。
 この不思議な感覚は私も味わったことがないくらいです。

 ただセッティングによってこんなに変化するカートリッジもなかなか使ったことがありません。
 とてもシビアなのです。

 全体を柔らかくないような音を出すこともできます。
 一つ一つも鋭敏です。しかし、一つの浸れるような世界観をつくりだしてくれていないことに
 聴き込んでいくと分かってきます。
 

   あまりに柔らかですので、機器間のケーブル等の接点が汚れていて高域が出ていないのでは、
  と最初感じたものです。それもあって全ての接点をスクワランでクリーニングしました。

 結局より柔らかくなりました。(笑)
  いやーこれにハマるとやばいですねー、という感覚もあります。
 
 LYRAのタイタンを何年もメインで聴き続け、針交換もして使い続けています。
 その切れ込みの良さは流石です。なかなかこのような演奏者が迫ってくるような感覚を
 味わえるものは少ないと思います。
 その良さは絶対今後も聴き続けたいと思いますが、バンデンハルを聴いた後で、この針を
 聴くと、ちょっと音が硬いのです。

  もう少し言い方を変えると、バンデンハルのほうが音が太いということだと思います。
 図太いのだと思います。図太いのに鋭敏だということです。
 よほど解像度が高いのだと感心します。

  全ての機器のレベルが高く、ケーブルを含めてトータルな解像度が出せないと、
 単に高域が出ない、平凡なカートリッジという評価になってしまう危険性がありそうです。

  諸刃の剣のようなカートリッジと言ったらいいのかもしれません。
  よくぞこんなカートリッジが創れたものです。
  こんな危ういカートリッジは日本では作れないでしょうね。
  創れる技術の問題もありますが、思想的にです。技術は日本だったらあると思います。
  しかし作れないという感じです。

  はやり個性があるというか、哲学を持ってこんな小さな世界で勝負している方が
  世界にはあるのだと感心しました。